ポインセチアの花言葉とその歴史的背景

ポインセチアの花言葉とその歴史的背景
街が華やかなクリスマスムードに包まれる頃、ひときわ鮮やかな赤で私たちを楽しませてくれるのがポインセチアです。
「クリスマスフラワー」の愛称で知られるこの美しい植物は、実はただの冬の装飾品ではありません。
情熱的な赤色に込められた花言葉や、メキシコの古代文明にまで遡る歴史的背景を知ることで、ポインセチアの持つ意味合いはさらに深く、特別なものになります。
この記事では、ポインセチアの花言葉をメインに、その由来や色別の意味、そしてクリスマスの象徴となるまでの波乱に富んだ歴史を徹底的に解説します。
大切な人へのギフト選びや、今年の冬の飾り付けの参考にしてください。
ポインセチアとは?

まずは、ポインセチアの基本的な情報と、クリスマスに欠かせない花となった背景を見ていきましょう。
ポインセチアってどんな花?
| 植物名 | ポインセチア |
| 学名 |
Euphorbia pulcherrima |
| 科名 | トウダイグサ科 |
| 属名 | トウダイグサ属 |
| 原産地 | メキシコ |
ポインセチアは、トウダイグサ科トウダイグサ属に分類される常緑低木です。
観賞期となる11月から12月頃に茎の上にある葉が、赤やピンク、白などに鮮やかに色づき、その華やかな姿から「クリスマスフラワー」と呼ばれます。
自生地であるメキシコでは、樹高3mにもなる樹木として成長します。一般的に花だと思われている鮮やかな部分は、実際には花ではなく、葉が変形した苞(ほう)と呼ばれる部分です。
ポインセチアはどこで育つ?
ポインセチアの原産地は、中南米の温暖な地域、特にメキシコや中央アメリカです。
日差しの強い熱帯の国が故郷であるため、ポインセチアは冬のイメージとは裏腹に寒さに弱いという特性を持っています。
そのため、日本で育てる場合は、冬場は最低でも10℃以上を保てる暖かい室内での管理が必須となります。
ポインセチアの名前の由来について
「ポインセチア」という名前は、この植物をアメリカに紹介した人物にちなんでいます。
19世紀前半、アメリカの初代駐メキシコ大使であった植物学者ジョエル・ロバーツ・ポインセット氏が、メキシコでこの美しい赤い花を発見し、本国に持ち帰って広めた功績を記念して「ポインセチア」と名付けられました。
また、原産国のメキシコでは、クリスマスの時期に咲くことから「ノーチェ・ブエナ(Noche buena)」、つまり「聖夜」を意味する愛称で呼ばれ、親しまれています。
ポインセチアの種類と色は?
ポインセチアといえば鮮烈な赤が定番ですが、品種改良が進んだ現在では、非常に多様な色や模様を持つポインセチアが楽しめます。
・赤:定番の色合いで、クリスマスカラーの象徴です。最もポピュラーで、花言葉も豊富にあります。
・白:冬の雪景色を思わせる色合いです。清潔感があり、落ち着いたクリスマスの演出にぴったりです。
・ピンク:サントリーフラワーズから出ている「プリンセチア」が代表的な品種です。柔らかくかわいらしい雰囲気で、女性へのギフトにも人気です。
・マーブル/斑入り:赤と白が混じった品種もあります。ユニークで装飾性が高く、飾り方の幅が広がるので、一味違うクリスマスを迎えたい方におすすめです。
色によって雰囲気や花言葉が異なるため、贈る相手やシーンに合わせて選べるのがポインセチアの大きな魅力です。
ポインセチアの花言葉は?

ポインセチアは、その華やかな色とクリスマスの歴史から、心温まるポジティブな花言葉を持っています。
ポインセチア全体に共通する主な花言葉は「祝福」「幸運を祈る」「私の心は燃えている」です。
これは、ポインセチアにまつわる有名なクリスマスの伝説に由来すると言われています。
それは貧しい少女が、キリストの誕生を祝う祭壇に捧げるものがなく、代わりに道端の雑草を捧げたところ、その草が真っ赤な美しいポインセチアに変わったという「クリスマスの奇跡」の物語です。
どんなささやかな捧げ物でも心からの愛が込められていれば、神様は受け入れてくださるという教訓から「祝福」や「幸運を祈る」といった花言葉が生まれました。
ポインセチアは色別に花言葉が変わる
ポインセチアは、色によってさらに異なるメッセージを伝えることができます。
・赤:「清純」「私の心は燃えている」「祝福」 キリストの血の色、情熱的な愛、純粋な心といった意味合いが込められています。
・白:「慕われる」「あなたの祝福を祈る」 雪のイメージ、純粋、尊敬の念が込められています。
・ピンク:「思いやり」「清純」 優しい愛情、思いやりに満ちた心が込められています。
特に赤色の「清純」は、古代メキシコで純潔の象徴とされていた歴史にも由来しており、クリスマスのギフトとして最適な花言葉と言えるでしょう。
ポインセチアの歴史

ポインセチアがクリスマスのシンボルとなったのは、キリスト教文化との結びつきが深く関係しています。
元はメキシコで神聖視されていた花
ポインセチアの歴史は古く、原産地メキシコではアステカ文明の時代から親しまれていたとされています。
アステカの言葉(ナワトル語)で「Cuetlaxochitl」=「革のような花」「枯れる花」を意味する名で呼ばれ、その鮮やかな赤色は純潔さの象徴とされていました。
また、薬草としても利用されており、白い樹液を解熱剤として使ったり、赤色の苞を染料として利用したりと、先住民の暮らしに深く根付いていた植物だったと考えられています。
(参考元:イリノイ大学公開講座「観葉植物 歴史」)
植民地時代にキリスト教文化と結び付けられる
17世紀頃、スペインの植民地となったメキシコにフランシスコ修道会の宣教師たちが移り住んできます。
彼らは、ポインセチアの鮮やかな色彩に着目しました。赤をキリストが流した血(献身と愛)、緑を永遠の生命の象徴と解釈し、キリストの誕生を祝うクリスマスの装飾に使い始めたとされています。(飽くまで一説です)
この時期から、ポインセチアはメキシコで「ノーチェ・ブエナ(聖夜)」と呼ばれ、キリスト教の儀式と深く結びつくようになりました。
また、「貧しい少女ペピタが、キリストへの捧げ物として道端の雑草を摘んで教会へ持っていくと、それが奇跡的に美しい赤い花に変わった」という起源伝説も生まれました。
(参考元:TIME誌「ポインセチアがいかにしてクリスマスの象徴となったか」 Norman Ellstrand & Nathan Ellstrand)
(参考元:東京新聞「メキシコにペピタという貧しい少女がいたそうだ」)
ジョエル・ポインセットがアメリカで紹介!
ポインセチアが世界的な「クリスマスフラワー」へと飛躍するきっかけを作ったのが、名前の由来となったジョエル・R・ポインセット(Joel Roberts Poinsett, 1779–1851)氏だとされています。
1820年代に彼はメキシコからアメリカへポインセチアを持ち帰りました。
そして植物学者としての知識を活かし、植物園へ贈ったことで、アメリカの園芸家の間で「美しい植物」として知られるようになったと考えられています。
(参考元:Wikipedia「ジョエル・ロバーツ・ポインセット」)
(参考元:カリフォルニア大学農業天然資源部門 「ポインセチアの歴史」)
20世紀初頭にクリスマスフラワーとして定着
ポインセット氏の紹介後、ポインセチアはアメリカで商業的な栽培が進められました。
特に、冬に赤く色づき、クリスマスカラーにぴったりな特性から、装飾品としての需要が増加。20世紀初頭には、クリスマスにはポインセチアを贈ったり飾ったりする習慣が定着し、現在に至る「クリスマスフラワー」としての地位を確立しました。
ただし、当時はほとんどのポインセチアが鉢植えではなく、切花として販売されていたそうです。
1920年代になると背が低く枝分かれしやすい新しい品種が導入され、ポインセチアの「鉢植え」としての販売が始まりました。また、クリスマスに合わせて開花時期を調整するのが難しく、植物がすぐに徒長(背が高くひょろひょろに伸びる)してしまうため、栽培コストがかかる植物だったのだとか……。
(出典元:米国農務省農業研究局「ポインセチア」)
日本でのポインセチアの歴史

日本へは、ポインセチアはいつ頃、どのようにして渡ってきたのでしょうか。
明治中期にポインセチアが渡来したとされる
ポインセチアが日本に渡来したのは、明治時代の中期頃とされています。
当初、その鮮やかな赤色の苞を、中国の古典に登場する赤い顔をした伝説上の動物「猩々(しょうじょう)」に見立てたことから、「猩々木(ショウジョウボク)」という和名が与えられました。
(参考元:コトバンク|ポインセチア)
1924年〜新宿御苑にて「ロゼア」が栽培
大正13年には新宿御苑で赤色と桃色の「ロゼア」という変種が育てられていたことが記録に残っています。なお、この桃色のロゼアは朝香の宮(朝香宮鳩彦王。日本の旧皇族)がヨーロッパから持ち帰ったもので、昭和五年になると横浜植木会社から販売され、一般に広く栽培されるようになりました。また白色種は伏見の宮家に入ったことから「伏見白」と呼ばれて御苑で作られていたとされています。
(出典元:南方植物雑記28 「ポインセチア」)
1960年代〜栽培技術の研究が進む
1960年代に入り、日本の環境に合わせた栽培技術の研究が進んだとされています。日照時間を調節してクリスマスに合わせて色づかせる『短日処理(開花調整)』の技術についての研究報告も確認できることから、ポインセチアも品質の安定した大量生産の機運が高まったのかもしれません。こんなに古くから研究が進んでいるの調べると冬の鉢花の定番として一般家庭へ爆発的に普及するののも納得できるような気がします。
(出典論文:『ポインセチアにおける生長相の逆転について ポインセチアの日長反応に関する研究-2-』 佐賀大学農学彙報 /1964年 島田 恒治 他)
1990年〜室内でも楽しめるタイプも登場
さらに1990年代以降になると、日本の狭い室内でも飾りやすい、草丈の低い矮性(わいせい)品種や、家庭のリビングやテーブルに置ける「ミニポインセチア」へと需要がシフトし、人気が高まったとされています。
この頃の代表的な品種は「フリーダム(Freedom)」(室内で長く楽しめる花)です。
栽培しやすく管理の手間が少ないため、園芸店・ホームセンターでの普及が進みました。
(出典元:農林水産省 登録品種データベース)
(出典元:株式会社ハクサン 創立40周年記念)
2010年〜現在 今ではさまざまなポインセチアが販売中!
現在では、従来の赤だけでなく、白やピンク、マーブル模様など、多種多様なポインセチアが販売されています。
サイズも豊富になり、ギフトから自宅のインテリアまで、幅広い用途で楽しめるようになりました。
日本の品種は「コンパクトで花持ちが良い」「発色が繊細」と海外でも評価されています。
特にプリンセチアはIPMエッセンなどの海外見本市でも高く評価されました。
(出典元:サントリーフラワーズ「プリンセチア」)
ポインセチアの象徴と意味

ポインセチアは、その色と形すべてにクリスマスの特別な意味が込められています。
赤色は「愛」「キリストの血」
ポインセチアの赤色は、最も重要で象徴的な意味を持ちます。
それは、「情熱的な愛」そしてキリスト教において「キリストの血」、すなわち人類への献身と贖いです。
この深い意味合いが、クリスマスに愛と献身を伝えるギフトとしてポインセチアが選ばれる理由の一つです。
緑色は「永遠の生命」
色づいた苞の下にある緑の葉は、モミの木と同じく、「永遠の生命」や「希望」を象徴しています。
これは、キリストが与える永遠の命や、冬の寒さの中でも絶えない希望を表しています。
星形は「ベツレヘムの星」
苞が放射状に広がるその形は、キリストの誕生を東方の三博士に知らせた「ベツレヘムの星」に見立てられています。
この星は、希望と導きの象徴であり、ポインセチア全体がクリスマスという聖夜の奇跡を表現しているのです。
ポインセチアの特徴について

ポインセチアを飾る上で知っておきたい、興味深い特徴や実用的な豆知識をご紹介します。
花に見える部分は「苞(ほう)」
先述の通り、ポインセチアの鑑賞対象である鮮やかな部分は、花弁ではなく苞(ほう)と呼ばれる葉の変形したものです。
本当の花は、苞の中心にある小さな黄色い粒状の部分です。
苞が色づくことで、この小さな花を守り、昆虫を呼び寄せやすくする役割を果たしています。
毎年12月12日は「ポインセチアの日」
ポインセチアをアメリカに紹介したジョエル・R・ポインセット氏の命日である12月12日は、アメリカの議会によって「ポインセチアの日」と定められています。
この日を境に、クリスマスの準備や装飾が本格的に始まる、一つのサインとなっています。
冬のイメージなのに寒さに弱い!?
華やかな色づきから冬の花のイメージが強いですが、ポインセチアはメキシコ原産の寒さに弱い植物です。
日本では冬場、玄関先やベランダなどの寒い場所に置くと枯れてしまうため、必ず暖かく明るい室内で管理するように注意しましょう。
切ると白い汁が垂れて出てくるので注意
ポインセチアはトウダイグサ科の植物です。茎や葉を切ると、白い乳液状の樹液が出てきます。
この樹液には皮膚炎を引き起こす可能性のある成分が含まれているため、手についた場合はすぐに洗い流し、ペットや小さなお子様が触れないように注意が必要です。
和名は「猩々木」
ポインセチアの学術的な標準和名は「猩々木(ショウジョウボク)」です。
「猩々」とは、中国の伝説に登場する赤い顔をしたお酒好きの霊獣のこと。
ポインセチアの燃えるような赤色が、猩々の顔を連想させたことに由来する、ユニークな名前です。
まとめ

ポインセチアは、ただ美しいだけでなく、「祝福」と「愛」のメッセージを伝える、歴史と物語に彩られた特別な花です。
・花言葉は「祝福」「幸運を祈る」など、ポジティブな意味合い。
・歴史はメキシコの古代文明、そしてキリスト教文化と深く結びついています。
・特徴である赤、緑、星形の苞は、それぞれ愛、永遠の生命、希望を象徴しています。
今年のクリスマスは、ポインセチアが持つ深い歴史と温かい花言葉のメッセージを添えて、大切な人へ贈ってみませんか?
◆修正履歴
2025年12月8日:一部年号・品種導入時期について、根拠の確認状況に合わせて表現を修正。参考文献・出典情報を追記。
Oct 13, 2025