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深呼吸というご褒美

バラにおぼれる30日間、香りのバラの定期便

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浅間山麓・高橋植物園取材レポート 〜根付きのもみの木と、土と人が紡ぐ物語〜

火山のふもとで生まれた土と気候

浅間山の北麓に広がる畑を歩くと、土の色が黒くて軽いことに驚かされます。この地域の表土は火山灰が厚く堆積してできた黒ボク土で、地元では長く「のぼう土」と呼ばれ痩せた土地の代名詞でした。しかし第二次世界大戦後、火山灰土壌が有機物を抱え込んで植物に養分を与えにくい性質であることが分かり、化学肥料や排水改良の進歩によって開拓が進んだのです。

黒ボク土は粗い石が少なく粒が小さいため根が伸びやすく、適度な保水力と豊富な腐植を持ち、根菜類にも適した土壌だったことも見直されました。こうした改良のおかげで、現在の北麓は乳牛やジャガイモ、キャベツなどの大産地となっています。

この黒い土に混じる軽石も、火山の贈りものです。軽石は粘り気のあるマグマからガスが抜けて泡立ったまま急冷することで生まれる岩石で、穴だらけのため水に浮くほど軽量です。

浅間火山では灰色や黒色の軽石やスコリアが降り積もり、高橋植物園のモミの木畑には握ると崩れるほど軽い粒がごろごろしています。

この多孔質な軽石のおかげで土はよく水を通し、風が吹き抜ける高原の気候と相まって根腐れしにくい。寒さに強く湿り気を好むモミの木には理想的な環境です。高橋植物園の園主高橋さんも、「土を作るのは火山と先祖の努力のおかげ」と笑っていました。

 

畑から聞こえる花屋と庭師の視点

浅間山の裾野で何十年も前から苗木を育てている高橋植物園は、生産畑であるため突然の訪問はできませんが、公式サイトの通り数十センチから数メートルまで幅広いサイズの樹木を全国に出荷しています。

種を採るのは今も家族総出の手作業で、89歳のおばあちゃんが殻を割り、子どもたちも手を貸しているのだそうです。

時間と手間をかけて育てられた一本一本がどのように使われるのか、園主高橋さんは楽しそうに語ってくれました。

花屋と庭師の目線の違いについて尋ねたときの対話は特に印象的でした。

花屋は店頭での見栄えやツリーの完成度を重視し、葉がぎゅっと詰まってフォルムが整った個体を好み。

一方、庭師は庭に置いたときの「抜け感」を大切にし、枝葉の間に光と風が通り抜ける余白を選びます。

同じモミの木でも飾る場所や役割で求められる姿が異なることに、園主高橋さんは「同じ植物でも使う人によって見る目線が違くて面白いんだよなぁ」と目を細めていました。

 

モミの木の価値と可能性

歩きながらお話を伺っている中、10mはある大きなツリーの前で足が止まりました。
そのツリーは上部の葉が落ちてしまい、商品にはならないそうで、どう処分して土に返すか説明してくれたのです。

確かに、上部の葉が落ちてしまいモミの木としての市場価値は低くなっているかもしれません、しかし下の葉は瑞々しくハリがあり、そのまま装飾にできそうなほど立派な葉だったのです。

これは装飾やイベントに使えるのかも!?そんな再利用の話をすると、農家さんは「お客さんの声はなかなか聞けないから、そんな価値があるんだね」と喜んでいました。

森の資産をより魅力的に伝えるヒントが、こうした会話の中から生まれていくのかもしれません。

 

もみの木に触れて感じた生命力と香り

高橋植物園で育てられているのは日本固有種のウラジロモミ(Abies homolepis)です。葉の裏側が銀色に光り、柔らかい針葉が手に優しいこの木は、年に30 cmほどとゆっくり成長していきます販売可能になるまでにはおよそ3~4年かかるそうです。

一面に広がる3年もののモミの木を眺めながら、群馬の山の3年という時間がギュッと詰まっているモミの木は宝石のような美しさを感じずにはいられませんでした。

モミ類の中では大気汚染に比較的強い一方で、やや酸性の湿った土壌を好み、乾燥を嫌う性質があります。実際、園主は夏場でも乾かないように定期的に散水すると話していました。

取材の日、私は高さ1 mほどの若木にそっと触れてみました。まだ柔らかな樹皮に指を押し当てるとしっとりと弾力があり、葉先からは爽やかな松脂の香りがうっすら立ちのぼります。針葉の裏側は銀白色で、陽光を受けると鱗粉のような細かな粉がきらりと反射しました。

実際に育てる際は、ゆっくりと成長する木として庭に植え、根鉢が乾かないように毎日水を与え、風が通る場所で長い時間軸で見守ってあげてくださいと園主高橋さんはアドバイスしてくれました。

国産ツリーの人気と「お育てセット」

近年は国産のクリスマスツリーへの関心が高まっています。輸入物のオレゴンファーが規制や価格高騰で入手しにくくなったことに加え、根付きの国産ツリーならクリスマス後に庭へ移植できるからだそうです。

高橋植物園のブログでも、テレビ番組で紹介された翌年にはインターネット販売分が300本以上売り切れ、シーズン途中で販売を終了したと報告されていました。

取材日も「今年の分は8月にもなると予約でいっぱいだよ」と聞き、人気の高さを実感しました。

&YOUKAENでもモミの木を「育てる楽しみ」を味わってほしいとの思いから、「国産もみの木 お育てセット」という商品も登場しています。
このセットには高さ80〜90 cmの根巻き苗、焼杉製の鉢、3 リットル入りの用土2袋、鉢底ネットが付属します。用土はバーク堆肥や赤玉土、バーミキュライト、パーライト、ピートモス、軽石に緩効性肥料を加えたもので、通気性と保水性を兼ね備えています。

植え付けは鉢穴にネットを敷き、用土を少し入れて白い不織布を巻いたままの苗を置き、周りに土を足して根鉢が隠れるまで土をかぶせたらたっぷり水を与えるだけ。

付属の鉢は飾り用でやや小さめなので、数年後には一回り大きな鉢に植え替えるか庭に植えるとより楽しめるかともいます。

配送は北海道には追加料金が必要で、沖縄や離島には届けられないのでご了承ください。

土と人の物語、おわりに

火山が残した黒い土と軽石、風が吹き抜ける高原の気候。そして先祖から続く農家の努力。

この三つの要素が浅間山のふもとでモミの木を育んでいます。黒ボク土はかつて「役立たず」と呼ばれましたが、戦後の改良により根菜や牧草に適した土壌であることが見直され、軽石の隙間は根を支え排水性を高め、モミの木の成長を助けています。

一本のツリーの裏側には、自然の循環と人の手による丁寧な育成が織りなす物語があります。その物語を知ることで、飾る瞬間の木がより愛おしい存在に感じられたら嬉しいです。

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